初秋の尿前川本沢(沢登り回想) |
焼石岳は花の山として 夏場は近年特に多くの登山者で賑わう様になりましたが、
この山には 蔵王山域であれば八方沢 ・船形山域であれば横川 ・栗駒山域であれば産女川 といった日本百名谷の一つに匹敵する尿前川本沢という美渓秀渓の沢が存在します。
(2004年度版「新・日本百名谷」には追加編入されたようです)
尿前本沢夫婦滝手前には東見ノ廊下と称される 200mほどの長さの幅広い滑状の岩床が続く
尿前川本沢は いずれも初秋の9月に2回遡行していますが、初回の1981年という時点では、現在の様にネット検索で多量の写真や説明文の情報が得られる時代でも無く、わずかに日本登山大系や月刊誌の岳人や山と渓谷の記事などの遡行図と解説が頼りでした。 それが返って沢の渓相はどんなだろうか、ここのゴルジュは突破できるだろうか、そしてこの滝はどんな風に登ったら良いのだろうかなどと、想像に胸を膨らませ 入渓するのが楽しい時代でもありました。
初回の記録は二口磐司沢 https://turubei.exblog.jp/237444231/ に紹介の「憧峰」創刊号に私の記録で下記の様に記載されてあります。
1981年9月23日 メンバーはTさん・I君・F君・M女史と私の5名
早朝いつもながら駅前吉野家の牛丼で朝食を済ませ、ひたすら高速道路を北に走る。
水沢インターを抜け、尿前から蜂谷林道に入ると次第に青空が広がり始め、そこから絶好の沢日和になってくる。中沼登山口に車を置いて林道を10分程歩き、右手に金命水まで続いているという夏道に入るが、しばらく行くと道が途切れて来る。結局藪漕ぎをして沢に降りると、対岸が崖になっているゴーロ状の所に出る。水が青く濁っているとでも表現したら良いか、独特の色を持って流れている明るい沢である。
早速身支度を整え歩きだすと中州にぶつかる。現在地を地図で確認してから暫く行くと8mばかりの滝が赤褐色の岩肌から流れ落ちている。その上は右岸からハタシロ沢が流れ込んでいて、まもなくすると右岸よりフロ沢、続いて左岸からの万円沢に出合う。本沢はこの万円沢に流れ込む形で合流しておりここからゴルジュ帯に突入する。
6mの滝を始めとして滑ぎみの滝が続き 快適に遡って行くと25m三ツ折の滝に出る。参考にした記録(日本登山大系)では左岸の広いルンゼを高巻いているが、Tさんが滝の右岸でカブリ気味の所からハーケンを打ち込み取り付く。滝の中段からも右岸の方にルートをとって微妙なバランスとフリクションでじっくりと登る。
三ツ折の滝を全員登りきるのに少し時間を要したので、その上の小滝は高巻き ゴルジュ帯も過ぎると、この沢一番の高さと美しい釜を持った40mの滝に出る。I君をトップに右岸を登ると上半分はシャワークライムになる。(この滝も参考記録では左岸を高巻いている)このあたりから周辺の木々は少しずつ色づき始め、濡れた体にも震えが来てやはり初秋の感が濃い。40mの滝でもザックを吊り上げるのに手間取って時間を要したので、以後は少しピッチを上げて歩く。
2~3の滝を過ぎると距離にして200mもあろうか巾も広く快適な岩床が続き全員リラックスして遡る。夫婦滝が見えて来たあたりで急ぎ昼食を済ませる。またしても吉野家の牛丼弁当である。
夫婦滝は右俣の支沢が細く段々の30mの滝となって流れ込み、左俣本沢は滑状30mの滝で対を成す。夫婦滝という名がピッタリの感じである。ここは右岸を巻いてしばらく行くと100mの滑状の滝に出る。傾斜もそれほど無いので滝という感じがしないまま過ぎてしまう。その上の小滝を登ってしまうと支沢が幾つか現れ水量もぐっと減ってくる。もう源頭間近である。今年は雪が多かったせいか、この辺りはまだ雪渓の片割れが残っており、その廻りには点々とシナノキンバイが季節外れながら咲いている。その上からも沢は次第に細くなり、やがて藪で覆われてしまう。背の低い灌木で楽な藪漕ぎとなったが、ものの10分もすると夏道のある山頂附近で草紅葉の美しいお花畑一帯に出る。
全員思いの他、明るく美しい沢に満足し合い中沼コース夏道を下山、夕闇迫る中を登山口に着く。
コースタイム:中沼登山口7:10~尿前本沢着8:00~ハタシロ沢出合9:15~三ツ折滝9:20~40m大滝10:30~夫婦滝13:50~100m滑状の滝15:00~中沼コース夏道16:30~中沼登山口18:00
この記録の遡行図

古い アルバム見ていたらこの時の写真が4枚ほど出てきましたので、
(37年もの歳月を経て、大分セピア色に変色して来ました)

万円沢出合上から突入するゴルジュ帯,ヒョングリの滝あたりか

三ツ折れの滝に出て、滝の直登ルートをどうとるか眺めているところ?

40m大滝は右岸直登。一ピッチでは登れず、よく見ると中段で確保しているI君の姿が見受けられる。セカンドで登っているTさんの姿ははっきりと見える

写真順番から行くと40m大滝と東見ノ廊下の中間にある滝の様である
二回目は1996年9月15日
もう一度この沢に行って見たくなり、当時まだ会に所属していたK君とS君に声を掛けて行った時のもの
(写真フィルムをデジタル化したものですが、40m大滝から上部のものだけになってしまいました。この時の遡行図のスケッチも見つかりましたので付け加えます)

40m大滝
二回目のこの時は右岸を大高巻きしている

遡行図で写真と記されてある 堰堤の様な滝
(40m大滝と東見ノ廊下の間にある)

東見ノ廊下が終わりになると出てくる夫婦滝

夫婦滝は左俣本流が男滝、御覧の様に右俣女滝は段々状で50m程続く

夫婦滝左俣本流は右岸を高巻く、
セカンドで登っているK君

源頭で現れる雪渓。この年も雪の多かった年だった様である。
焼石は雪積量も多く、雪渓も遅くまで残りますので
雪渓の少なくなる初秋時期の遡行がお薦めです

源頭の雪渓は傾斜も緩く リラックスして歩ける
ここかから少し歩くと夏道が横断するところにとび出る

この時のスケッチ遡行図